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優紀のぐちゃぐちゃにもつれた心の糸を、早くこの手でほどいてやりたい。
そして、ひたすら甘やかして、心の傷を癒してやりたい。
ゆっくり時間をかけて、彼女の心を何重にも覆っている固い殻を一枚ずつ剥がしていくつもりだったのに。
そして、優紀が、俺が笹岡と付き合っていると思いこんでいることだが、これは完全な誤解だ。
とにかく、その誤解だけでも解きたい。
俺は1階まで降り、警備員に紀田さんが来たらスマホで知らせてくれと言づけて、高木書店に向かった。
だが、優紀は俺の話をまったく聞こうともせず、自室に籠ってしまった。
「ああ見えて、ものすごく意固地なところがあるからな、優紀は」
たまたまその場にいた浩太郎にそう言われた。
「ああいう精神状態のときは、何を言っても無駄なんだ」
さすがは兄だ、彼女のことをよく把握している。
浩太郎は真面目な顔になって、尋ねてきた。
「ひとつ確認しておきたい。お前、優紀をどう思ってるんだ」
俺は浩太郎の目を見て、きっぱり言った。
「この世で一番大切な女性だよ」
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