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紀田さんは慌てて言い添えた。
「もちろん、加藤さんになんの不足もありませんよ。ただただ、うちの社内の問題で」
わたしは戸惑って、部屋を見回した。
一番奥の席で玲伊さんが今まで見たことのないような険しい顔をしている。
その横は、いつものように笹岡さん。
ふたりの姿を見て、少し胸が痛んだけれど、今はそれどころではない空気が、この狭い会議室中にみなぎっていた。
なかなか頭を上げようとしない紀田さんに、玲伊さんは声をかけた。
「紀田さん、とにかく座ってください」
彼女ははっとした様子で椅子に座り、わたしと律さんも席についたことを確かめてから、事情を話しはじめた。
「〈シンデレラ・プロジェクト〉のことを漏れ知った副社長が、編集長に圧力をかけてきまして、今のモデルは降ろして、香坂さんの大ファンである自分の孫をモデルに使えと……」
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