第6章 〈レッスン3〉 ハグ+キスの真の効用

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 紀田さんは言いづらそうだった。  やりきれない気持ちが表情に濃く表れていた。 「もちろん、編集長に抗議しましたよ。加藤さんがとても頑張ってくださっていることを必死で訴えたんですが……」 「信じられない」  律さんは心底、呆れた様子でそう言い捨てた。  副社長だからというだけでなく、その人物は雑誌のスポンサーにも顔が利くとのことで、どうしても逆らうことができなかったらしい。  玲伊さんのファンというのなら、別にモデルにならなくても客として来ればいいようなものだけれど、そのお嬢さんいわく“自分以外の一般人が香坂玲伊の手で美しくなる”というのが気に入らないらしい。  玲伊さんが言った。 「くだらない話だろう。その話を聞いて、俺は企画自体、白紙にしたかったんだが」 「それがそう簡単には行かなくて」と笹岡さんが補足した。  今回は〈リインカネーション〉にとっても宣伝効果が高い企画ということで、広告費を払わない代わりに特殊な契約を結んでいて、簡単に破棄できないそうだ。  
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