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店を出ると莉子さんは一人で帰っていき、俺と杏樹ちゃんと岳人の三人で少しフラフラと街を歩いた。
「莉子さんのことがほとんど聞けなかった」
「しょうがねぇだろ、お前が聞かないんだから」
「そうは言っても初対面からあれこれ聞くのは無理だろ」
俺が岳人にそう言い返すと杏樹ちゃんが「まあ、まあ」と間に入ってくれた。
「莉子は人見知りなのであんまり自分から話してくれませんよ。打ち解ければよく話すんですけどね。私ともそうでしたよ」
その言葉を聞いて俺は安堵した。
「良かった。俺のこと嫌だったのかなって思ったよ」
「そんなこと無いですよ。ああ見えて楽しんでましたよ」
「じゃあ、相手が良いなら次は二人で会うんだな」
岳人が意地悪く言う。
「え、は?いきなり?」
「いきなりでも何でもねぇよ。初めはこうやって付き合ったんだ。ここからは二人で進めてけよ」
「え、いやぁ・・・。せめて杏樹ちゃんだけでも来て?」
「えー・・・」
杏樹ちゃんも本気で渋っている。
「杏樹はダメだ、俺と一緒にいるんだから。そうもそうも二人の時間を邪魔しないでくれ」
「二人の時間っていつも二人の時間だろ・・・」
「まあ、とりあえず莉子には次も会いたいか聞いておきますね。会いたいって言ったら晃さんの連絡先を伝えて良いですか?」
「もちろん。それでお願いできるかな」
「分かりました。また連絡しますね」
俺達はそう約束すると、そこで別れた。
去り行く杏樹ちゃんと岳人はぴったり寄り添い、彼は彼女の腰に手を回している。
俺はその後ろ姿をただ見つめていた。
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