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講義が終わり、一華はそそくさと片付け始めた。
「一華、このあとって–––––」
「–––––この後予定あるから」
由依の問いに対して一華はそう答えると荷物を持ってその場を後にした。
「一華・・・」
由依は心配そうに去り行く彼女の背中を目で追っていた。
そして、一華は足早に大学を後にする。
詩織が彼女の姿を見かけたが、とても声を掛けられる雰囲気ではなかったので、そのまま彼女を見送った。
すると、そこへ背後から声を掛けられた。
「詩織・・・。一華、見た?」
「うん、見たよ。でも声を掛けられる雰囲気じゃなかった」
「そうだよね。私もさっきの授業で一緒だったんだけど、話し掛けるなっていう雰囲気で何も聞けなかった」
「まあ、確かにあの雰囲気じゃ無理だよね」
「・・・やっぱり晃先生だと思う?」
「そこは本人の口から聞けてないから何とも言えないけど・・・。今度、私たちで会いに行ってみる?」
「先生のところ?」
詩織はコクリと頷く。
「そうだね、行ってみよう」
二人は顔を見合わせて頷いた。
その頃、一華はSNSで知り合った新たな男との待ち合わせ場所に向かっていた。
『今日こそ先生を超える男だと良いけど、なかなかそんな男いないし。それに先生が卒業式であんなこと言わなければ今頃私はっ・・・!』
晃のせいにしても何も解決しないが、彼女はやり場のない寂しさをこうしてぶつけるしかできなかった。
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