第三話

1/4
前へ
/17ページ
次へ

第三話

「それで、お前は杏樹ちゃんとどうなんだよ」 「杏樹と?そりゃラブラブだよ」  岳人が勝ち誇ったように晃に言い、晃は軽く舌を打つ。 「あーあー、やだねぇ。惚気が始まるよ」 「お前が聞いてきたんだろ」  そう言いながら岳人はにやけているが、晃はフンと鼻を鳴らすとチューハイを一気に飲み干した。  岳人は蛸のカルパッチョをつまみながら晃に問う。 「そう言う晃はどうなんだよ」 「莉子さんとか?毎日のようにメッセージのやり取りはしてる。時々電話もするかな」 「電話までするってもう彼氏と彼女じゃねえか」 「うーん、でもお前らと会ってからはデートもしてないぞ」 「いや、そこは約束なり何なりしろよ」 「だって俺で良いのかなってさ」  急に晃がもじもじとし始めたので、岳人は盛大なため息をつく。 「面倒くさいな、お前。杏樹にはあんなにしつこかったのに」 「あれはお前の杏樹ちゃんへの接し方が可哀想だったから・・・」 「そうやって人の彼女を狙えるのに突然奥手になるなよ」 「いや、あの時はまだ杏樹ちゃんはお前の彼女じゃなかった」 「何言ってんだ、俺の彼女だよ」  岳人が少しムッとして言う。 「契約、とか訳の分からんこと言ってたくせに」 「それは俺と杏樹の問題だろ」 「それが杏樹ちゃんを苦しめてたのによく言うよ」  晃は卓唐揚げを口に放り込みながら勝ち誇ったように言う。  そして、対する岳人はハイボールを飲みながら言葉を返す。 「そりゃ、あれは悪かったと思ってる。でもあの時はああする他に方法は無かったんだ。それに、今はこうしてラブラブだろ。だから結果オーライだぞ。大体、今日はお前の相談に乗りに来たんだろ、負け惜しみを聞きに来たんじゃない」 「何が負け惜しみだ!」  晃が慌てて反論すると、岳人は意地悪な笑みを浮かべる。 「だって未だに杏樹のことを言うなんて負け惜しみだろ?」 「違うわ!」 「もういいや、面倒くさい。で、悩みは?」  岳人が面倒くさそうに手を振りながら彼に言う。  晃の先ほどまでの威勢はどこに行ったのか、少し小さくなりながらぽつりぽつりと悩みを打ち明け始めた。  
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

191人が本棚に入れています
本棚に追加