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第三話
「それで、お前は杏樹ちゃんとどうなんだよ」
「杏樹と?そりゃラブラブだよ」
岳人が勝ち誇ったように晃に言い、晃は軽く舌を打つ。
「あーあー、やだねぇ。惚気が始まるよ」
「お前が聞いてきたんだろ」
そう言いながら岳人はにやけているが、晃はフンと鼻を鳴らすとチューハイを一気に飲み干した。
岳人は蛸のカルパッチョをつまみながら晃に問う。
「そう言う晃はどうなんだよ」
「莉子さんとか?毎日のようにメッセージのやり取りはしてる。時々電話もするかな」
「電話までするってもう彼氏と彼女じゃねえか」
「うーん、でもお前らと会ってからはデートもしてないぞ」
「いや、そこは約束なり何なりしろよ」
「だって俺で良いのかなってさ」
急に晃がもじもじとし始めたので、岳人は盛大なため息をつく。
「面倒くさいな、お前。杏樹にはあんなにしつこかったのに」
「あれはお前の杏樹ちゃんへの接し方が可哀想だったから・・・」
「そうやって人の彼女を狙えるのに突然奥手になるなよ」
「いや、あの時はまだ杏樹ちゃんはお前の彼女じゃなかった」
「何言ってんだ、俺の彼女だよ」
岳人が少しムッとして言う。
「契約、とか訳の分からんこと言ってたくせに」
「それは俺と杏樹の問題だろ」
「それが杏樹ちゃんを苦しめてたのによく言うよ」
晃は卓唐揚げを口に放り込みながら勝ち誇ったように言う。
そして、対する岳人はハイボールを飲みながら言葉を返す。
「そりゃ、あれは悪かったと思ってる。でもあの時はああする他に方法は無かったんだ。それに、今はこうしてラブラブだろ。だから結果オーライだぞ。大体、今日はお前の相談に乗りに来たんだろ、負け惜しみを聞きに来たんじゃない」
「何が負け惜しみだ!」
晃が慌てて反論すると、岳人は意地悪な笑みを浮かべる。
「だって未だに杏樹のことを言うなんて負け惜しみだろ?」
「違うわ!」
「もういいや、面倒くさい。で、悩みは?」
岳人が面倒くさそうに手を振りながら彼に言う。
晃の先ほどまでの威勢はどこに行ったのか、少し小さくなりながらぽつりぽつりと悩みを打ち明け始めた。
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