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第一話
俺は今、岳人たちと待ち合わせたレストランへ向かっている。
そのレストランは名古屋駅の近くにある。
俺はそんなレストランになど滅多に行くことが無く、今回は岳人と杏樹ちゃんの提案だ。
場所は高層商業ビルの中にあるレストランで、俺はいつものジャージから少しはまともに見える格好に着替えてその場へ向かった。
俺は店に着き、受付にいる店員に声を掛ける。
「すみません、4名で予約していた橘の連れですが」
すると、その店員はにっこり笑って言う。
「いらっしゃいませ。先にお一人お見えになっていますのでお席の方へご案内します」
俺は店員の後に付いて一番奥の個室へと案内された。
先に来ている一人―――岳人はスマホの画面を見ていたが、俺に気が付くと眉を上げた。
店員は「ごゆっくりどうぞ」と言い残し、俺は彼の隣に腰掛ける。
「来たか、晃」
「よお。今日はありがとうな」
「いや。まあ、礼ならそれは杏樹に言ってくれ。彼女が持ってきた縁だからな」
「分かった。で、二人はいつ来るんだ?」
「もうすぐ来るはずだぞ。杏樹がその子を連れて来るらしいから」
「そうか。どんな子か楽しみだな」
「楽しみって写真見ただろ?」
「見たけど、実際に会うことはまた違うだろ」
「まあ、そうだけど。それより卒業式に告白してきたあの教え子は良かったのかよ」
「山田のことか?あいつは良いんだ、仕方ない。教師と教え子の関係だ」
「でも、卒業したらそんなの関係無くなるんじゃないのか」
「いやいや、そんな簡単なもんじゃないぞ。だいたい俺、ほとんどあいつの授業受け持ってないし」
「そうか。まあ、その子が気の毒だなって思っただけだからいいや。お前も無理して好きでもない奴と付き合うこと無いんだし」
岳人は宙を見ながらボソッと呟いた。
するとそこへ女性の楽しそうな笑い声が聞こえてきた。
その声は次第にどんどん大きくなる。
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