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俺達のいる個室がノックされるとガラガラと引き戸が開く。
「こちらのお席です、ごゆっくりどうぞ」
案内した店員はそう言い残して去っていく。
そして、杏樹ちゃんと彼女の友人が少しはにかみながら個室に入ってきた。
「すみません、お待たせしました」
杏樹ちゃんがそう言うと、少し後ろにいる友人は恥ずかしそうにペコリと頭を下げた。
「いや、大丈夫だよ。俺たちもいま来たところだ」
岳人が彼女に優しくそう言って微笑む。
杏樹ちゃんは良かった、と呟くと友人を俺の前に座らせて自身も席に着く。
今日の杏樹ちゃんは可愛らしいフリルのブラウスに真っ赤なフレアスカートだ。
一方の友人は肩とスカートの裾がレースになっているクリーム色のワンピースだった。
その友人は小柄で長い髪は結ってハーフアップにしている。
瞳はぱっちりとしていて、全体の雰囲気は小動物のような印象だ。
「はじめまして、設楽莉子と申します。よろしくお願いします」
莉子さんは俺たちに挨拶してくれ、俺たちと岳人も挨拶をする。
「こんな運動バカみたいなやつだけど、仲良くしてやってね」
最後に岳人が彼女に向かって余計な事を言うので、俺は机の下で奴の脚を蹴る。
しかし、岳人は何も言わずに俺の顔を見てにやりと笑っただけだった。
「とりあえず、何か注文しましょう」
杏樹ちゃんが上手く間に入ってくれ、俺たちはメニュー表を開く。
この店はフランスのガレットが食べられる店で、ランチセットではガレットにスープとドリンク、デザートにクレープがついてくる。
「俺はサーモンマリネのガレットにするよ」
「あ、私も」
岳人と杏樹ちゃんはすぐに決まった。
一方の俺と莉子さんはなかなか決められない。
「どうしようかな。ベーコンクリームも良いけど、ホタテも良いな」
「ラタトゥイユも美味しそうだなって思います」
「あ、本当だ」
俺と莉子さんはあれだ、これだと盛り上がる。
「そろそろ決まったか?」
その声に俺たちはハッと我に返り、声の方を見ると岳人が頬杖をついて面白そうに俺を見ていた。
「すまん、俺はベーコンクリームにするよ」
「私はラタトゥイユにします」
そして俺達はベルを鳴らして店員を呼んで注文をした。
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