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注文を終えてから、俺たちは他愛もないことを話していた。
「杏樹ちゃん、最近仕事はどう?」
俺は彼女に聞く。
「仕事は良くも悪くも忙しいですけど、岳人さんと何とか乗り切ってます」
彼女はそう言ってヘヘッと笑い、岳人も杏樹ちゃんを見て愛おしそうに笑う。
「そうか、あんまり無理しないようにね。それにしても二人はラブラブだなぁ」
その言葉に莉子さんはクスクスと笑って言う。
「杏樹、私と話す時も岳人さんの話が多いんですよ。すごく幸せそうに話すから羨ましくなっちゃうくらい。遊んだ時も必ず岳人さんが迎えに来てるから本当に大切にされてるんだなって思ってました」
「え、お前そうなの?」
「まあな。別に迎えくらい良いだろ、そんな驚くなよ」
岳人が嫌そうな表情で言うが、それが面白くて俺は更に茶化したように言う。
「いや、驚くよ。過保護すぎだろお前。ねぇ、杏樹ちゃんも困るよね?」
「いや・・・。私は来てもらえて嬉しいですよ」
「ほら見ろ。俺たちが良けりゃ良いんだ」
杏樹ちゃんの言葉に岳人は勝ち誇ったような表情になる。
「はいはい、そりゃ良かったな」
俺は何だか面白くなくなってあいつに適当に返す。
すると岳人はため息をついて「お前が振ったんだろ」と呟いて莉子さんに問う。
「莉子さんは休みに何してるんですか?」
「私は買い物に出かけたり、料理したりしてますね。あとは映画も時々見ます」
「なるほど、色んなことしてるんだ。運動とかはしない?」
「運動は・・・。あんまり得意じゃなくて・・・。体育の先生なんですよね?」
莉子さんは俺を見て少し恥ずかしそうに言う。
「あ、はい。体育の先生してますよ。でも体育会系の人が良いとかそういうのは無いですよ、はは」
俺は慌てて変な空笑いをしてしまう。
お互いに初対面なので緊張してしまうのだ。
岳人も莉子さんとは初対面のはずなのに営業パワーのせいかものともしない。
俺が初対面を相手にするのなんて大抵四月の新入生くらいなものだ。
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