第一話

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 店を出ると莉子さんは一人で帰っていき、俺と杏樹ちゃんと岳人の三人で少しフラフラと街を歩いた。 「莉子さんのことがほとんど聞けなかった」 「しょうがねぇだろ、お前が聞かないんだから」 「そうは言っても初対面からあれこれ聞くのは無理だろ」  俺が岳人にそう言い返すと杏樹ちゃんが「まあ、まあ」と間に入ってくれた。 「莉子は人見知りなのであんまり自分から話してくれませんよ。打ち解ければよく話すんですけどね。私ともそうでしたよ」  その言葉を聞いて俺は安堵した。 「良かった。俺のこと嫌だったのかなって思ったよ」 「そんなこと無いですよ。ああ見えて楽しんでましたよ」 「じゃあ、相手が良いなら次は二人で会うんだな」  岳人が意地悪く言う。 「え、は?いきなり?」 「いきなりでも何でもねぇよ。初めはこうやって付き合ったんだ。ここからは二人で進めてけよ」 「え、いやぁ・・・。せめて杏樹ちゃんだけでも来て?」 「えー・・・」  杏樹ちゃんも本気で渋っている。 「杏樹はダメだ、俺と一緒にいるんだから。そうもそうも二人の時間を邪魔しないでくれ」 「二人の時間っていつも二人の時間だろ・・・」 「まあ、とりあえず莉子には次も会いたいか聞いておきますね。会いたいって言ったら晃さんの連絡先を伝えて良いですか?」 「もちろん。それでお願いできるかな」 「分かりました。また連絡しますね」  俺達はそう約束すると、そこで別れた。  去り行く杏樹ちゃんと岳人はぴったり寄り添い、彼は彼女の腰に手を回している。  俺はその後ろ姿をただ見つめていた。
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