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第二話
大学の食堂で新入生らしき少女二人が頭を突き合わせて話し合っていた。
「ねえ、最近一華見た?」
「いや、見てないな」
「やっぱり?どうしたんだろ」
「まさか晃先生のこと引きずってるとか?」
「いや、さすがにそれはないでしょ」
「でもさ、前に一華がうちの体育学部の学生とすれ違った時にボソッと晃先生とは違うって言ったんだよね」
「え、まじ?じゃあ引きずってるのか?でもさ、それが原因で学校来てないってのはおかしくない?」
「まー、確かにそうなんだけどね。でも休んでるって確証は無いし―――」
「―――いや、休んでるよ」
一人の少女が言いかけたところで後から三人目の声が聞こえてきた。
「詩織・・・。休んでるってどういうこと?」
詩織と呼ばれた長髪の少女は、二人の隣に座ると学食を食べながら話し始めた。
「ん、私一華と同じ共通科目受けてるんだけど、今週の授業来てないんだよね」
「やっぱりそうなんだ」
少女二人は眉を細める。
「で、あんたたちは晃先生が原因だと思ってんの?」
「まあ、そんなとこかな」
「んー、それも一理あるかもよ」
「え?」
三人は更に額をくっつけてヒソヒソと話し始めた。
「いや。この前ね、同じ学部の子に一華って男遊びが激しいの、って聞かれたんだよね」
「はぁ?そんな訳ないじゃん?」
「私もそう思うんだけどね。どうもこの前、その子が栄で一華を見たらしくてさ」
「ほー。てか何でその子が一華を知ってるの?」
「だって私達と歩いてるの何回も見てるじゃん?」
「あー、なるほどね」
「確かにあの黒髪ロングにキリッとした感じの顔立ちじゃ印象に残るか」
「そうそう。で、一華が三十くらいの男と一緒にホテルに入って行くのを見たんだって」
「えー!?」
「まじ!?」
「しかも写真もあるの、ほら」
二人は詩織が差し出したスマホの画面を覗き込む。
そこに写る女性を見て、二人は息を呑んだ。
写真の女性は紛れもなく一華なのだ。
だが写真に写る一華は普段よりも化粧が濃く、大人っぽい印象を与える。
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