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「本当に一華じゃん・・・」
「何で・・・?パパ活してるの・・・?」
「まさか、あの子に限ってそんなこと」
三人の間に沈黙が流れた。
今すぐ一華を正気に戻さなくてはならないが、その方法が分からない。
「やっぱりこれって晃先生に振られたから・・・?」
「じゃないの?」
「でも、何で今になって・・・?もう五月だよ」
困惑する二人に対して詩織は淡々と答えていく。
「んー、初めの一ヶ月は吹っ切ろうとしたんでしょ。だってさっき言ってたじゃない、体育学部の学生がどうとか」
「あー・・・」
「だから多分寂しさを埋めるためにやってるんじゃないかなって思う」
「これって教授とかに言ったほうが良いのかな?」
その言葉に詩織は首を横に振る。
「そんなことしたって教授としては困るよ。高校とは違うから。それに結局は一華の心の問題だから」
「心の問題・・・。じゃあさ、晃先生に話してみる?」
二人のうち一人が眉間に皺を寄せながら口を開く。
「うーん、それをされても晃先生も困るかもしれないけど。今の私たちにできるのはそれしか無いかもしれないね」
「じゃあ、今度晃先生のところ行ってみようよ」
「そうだね」
「賛成!」
詩織はもう一度、一華が写る写真を見る。
その男はヒョロヒョロとした細身の男で、黒髪に黒のマスクを顎に着けている。
おまけに目はどこか光が無い。
どこか恐ろしい雰囲気を放っていて、彼女としては何故一華がこんな男を選ぶのか全く理解できなかった。
きっとそこまで思い詰めているのだろう。
三人がいる食堂の前をひっそりと一華が通っていった。
その姿はまるで別人で、頰は心なしか腫れていて、服の袖やスカートの裾から僅かに見える部分は痣だらけだった。
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