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これまでの経験から考えるに、おやつタイムを逃すと、また数時間待たなければならない。いや、全くもって耐えられる気がしない。
「待て、ちょっと待て。Web会議と言ったな」
何十年も生きていると、消化するだけの器官にも多少の知恵がついてくる。
「画面をオフにして、音声だけで参加すればいいだろう。そうだ、一瞬マイクも切ってもらえよ。そしたら、チョコの1つや2つくらい、食えるだろう」
「案としてはいいけどな、そうもいかんのだよ」
脳は、やや言いにくそうにうなった。
「この会議、主が主催してるから」
「そんな奇跡いらねえ!」
胃が絶叫したら、再び腹が鳴った。
「おっと失礼、別のところからも要請だ」
脳は胃との通話をそのままに、対応した。
内線番号、1010。
「こちら膀胱。限界突破。エマージェンシー」
言葉を紡ぐ余裕もないらしい。
「突破はしてないだろ、それくらいこっちにもわかる」
脳の方も、慣れたものだ。
「うーん……あと30分くらいで終わる予定だから、それまで我慢しろ」
「さ、30分……」
「幸い、主は会議に集中していて、トイレのことは意識していない。こっちで何とか気付かせないようにするから、そっちも頑張れ。というか、耐えろ」
「耐えるのはいいけど、椅子から立ち上がった時が心配だなあ」
「成功率100%のお前なら、大丈夫だ」
主の社会的立場を思えば、膀胱には引き続き、成功率100%を維持してもらいたいところである。
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