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「ちょっと待て」
二者の会話を聞いていた胃が、割って入った。
「会議は30分で終わるんだろ? だったら、おやつも一緒に取れるな?」
「いや、そんな余裕はない」
脳が即座に返した。
「会議のあと、すぐに自分の仕事に戻る必要がある。今日中に終わらせたい業務は、ザッと2~3時間くらいだな。となると、あまり休憩に割いている時間はない。主は、サッサと帰りたいタイプの人間だからな」
「タイプの人間だからな、ってお前がそうさせてるんだろうが」
胃が低い声でうなった。
「だがな、さっきも言ったがチョコ2、3個でいいんだ。まあ、膀胱の緊急事態はいいさ、そっちを優先させてやる。でも、それが済んだらこっちにも食べ物をくれよ」
「落ち着け、夕飯には絶対食べさせてやるから」
「それじゃ遅いんだよ。空いた今じゃないとこっちは満足しない。夜になってからじゃ、空きすぎて返って食べられなくなる。これまでも、何度かやっただろ?」
「違うんだ、聞いてくれ」
脳は声を張った。食べさせてやれるなら、こちらだってそうしたい。だが、色々と事情というものがあるのだ。
「時間がないと言ったのは、チョコ2、3個を口に含む話じゃない」
「は?」
「コンビニまで買いに行く時間がないということだ」
「はい?」
「今、主の手元にはおやつがないんだよ」
「何!?」
「デスクの中にストックがあると思って、朝買って来なかったらしい」
直接話を聞いていた胃はもちろん、会話を必死に盗み聞きしていた他の消化器官たちの表情も、みるみるうちに悲壮なものへと変わっていった。
「何なんだよ、もう!」
再び、ぐうと腹が鳴った。
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