内線番号5890

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「……ふう」  疲れている時、お腹が減っている時の食事ほど、美味しいものはない。  欲するがままに食べていたら、あっという間に完食してしまった。 「ごちそうさま」  この店は食券式だから、支払いは先に済ませてある。  ふくれた腹を抱えて、外に出た。 「やあ、食った」  あとは、このまま帰って風呂に入って、寝るだけだ。 「これで胃も満足してくれたかな」  心の中でつぶやいたら、何を言ってるんだと少し笑えてしまった。 「……なんてね」  夜も更けた。  体のあちこちが、眠気を訴えてくる時間帯である。  そんな中、鳴るはずのない番号が鳴った。  内線番号、5890。 「あい、こちら脳」  何事かと思いながら、応える。 「あ、あの……」 「何だ、さっきたらふく食っただろ」 「うん、だから今……すっごく苦しい」 「……」 「この時間に大盛りはやり過ぎだ、はち切れそうだよ」 「5890――ごは(ん)くれって言っときながら、贅沢な」 「……」 「頑張って消化しな。せいぜい、明日の朝食が食べられる程度にはしておくんだな。後で、自分たちがつらいぞ」  ガチャン、と内線が切れた。  ~Fin.~
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