腹ペコのバク

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腹ペコのバク

ぼくはバク。 たいそう食いしん坊なぼくは、 毎晩毎晩みんなの夢をバクバクごちそうになるんだ。 ぼくの故郷は住んでる人は少ないけれど、 おとなもこどもも、 みんなが虹色にかがやく素敵な夢を見ていた。 そんな夢をほんの少しお裾分けしてもらうだけで、 ぼくはたちまち幸福なきもちになるんだ。 みんなの夢を平らげて 腹を空かせたぼくは 「トウキョウには数え切れぬほどたくさんの人間がいる」 と教えて貰った。 たらふく夢を食べたくて、 素敵なごちそうを食べたくて、 ぼくははるばる東京へやって来た。 でも、なぜだろう。 トウキョウは、どうしてこんなに人がたくさんいるのに、 楽しい夢が溢れていていいはずなのに、 僕に見えるのは 灰色のちっぽけな夢ばかり。 光り輝く楽しい夢を見つけても、 一口分けてもらったらすぐになくなってしまいそうで、 これじゃあ申しわけなくてごちそうになれないよ。 僕はもうお腹ペコペコだ。 明るい光に包まれた ぼくが憧れていたトウキョウの夜は、 星も見えない四角いお空。 みんなの夢はどんな夢なの? 灰色のちっぽけな暗い夢なの? そんな悲しいことは思わないでほしいな。 だって、 ぼくが気づかない光り輝くおっきな夢を、 みんなは見ることができるのだから。 いつだって、 どこでだって。 ああ、お腹がペコペコでつらくなっちゃったよ。 ぼくはもう、 故郷へ帰りたいな。
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