事後報告ですけど何か? 

1/1
51人が本棚に入れています
本棚に追加
/33ページ

事後報告ですけど何か? 

この人は一体誰なんでしょう? ダイニングテーブルを挟んだ向いの席に、知らないおじさんが座っている。 そして、そのおじさんの隣に、わたしのママがいる。 今日は大学が終わったら真っ直ぐに帰って来るように言われ、その通り帰って来ると、こうなった。 「紗羅、こちら戸田総士さん。総士さん、娘の紗羅です」 「初めまして、紗羅ちゃん」 えーっと、この状況って何? 「わたしたち、結婚したから」 満面の笑みを見せるママ。 はぁぁあ??? 結婚「する」じゃなくて? 結婚「した」? 事後報告? そんな大事なこと一言も相談なしに? 「総士さんには高校生のお子さんがいてね、今はお母さんと暮らしてるんだけど、高校が夏休みに入り次第、こっちで一緒に暮らすことになってるから」 「ごめんね。いきなりでびっくりさせて。息子は、祥太っていうんだけど、今受験生で、こっちの大学を受けたいっていうから、美奈ちゃんの提案で一緒に暮らすことになったんだ」 はいっ? 「祥太には、自分のことは自分でするように言ってあるから、紗羅ちゃんに迷惑をかけることはないと思うんだ。夏休み中、昼間はずっと予備校に行っていていないし」 「紗羅の作るご飯は美味しいもんね。祥太くんにも作ってあげてね」 待って、待って、待って。 一度に情報量多すぎでしょ? 高校生の息子? 祥太? 「ママ、ちょっと来て!」 「え? なぁに?」 「すみませーん、ちょっと失礼しまーす」 ママをわたしの部屋まで引っ張って行って、思わず壁ドン。 「説明して! これ何なの?」 「何って……紗羅が言ったんじゃない」 「わたしが? 何を?」 「高校生のイケメンがいるシングルファザーと再婚したら、ときめくネタを提供してくれるって」 そういえば、そんなこと、言った…… 言った気がする…… 「すっごいいろんなコネ使いまくって相手探したんだから、約束守ってよ」 「本気で言ってる?」 「もちろん! それに、ちゃんと定番の『旅行』も計画済みだから!」 「嘘でしょ?」 「本当!」 「そうまでしてネタが欲しいの?」 「そろそろまた連載が欲しいの!」 あまりのことに、思考が停止してしまった。 ママの職業は漫画家で、47歳になった今でも、中高校生を対象とした学園恋愛漫画を描き続けている。 友達のお母さんと比べて、ちょっとお花畑な人だとは思っていたけれど、まさか漫画のネタのために再婚までするとは、考えてもみなかった。
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!