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来訪者
両手に抱えた買い物袋を一旦ドアの前に置いて、暗証番号を押す。
ドアを開けて玄関に入ると、見知らぬ男物のスニーカーと、パンプスが目に入った。
祥太くん?
わたしがいない間に家に着いちゃってたんだ。
でも、パンプスまであるって……まさかお母さんと一緒に来たってことはないよね?
急いで家の中に入ると、廊下とリビングを隔てるドアを開けた。
すぐに目に飛び込んできた光景で、その心配は杞憂に終わった。
ソファの上に、上半身下着姿の女性。その上には茶髪の男性がまたがって、キスをしている。
呆然とその様子を見ていると、バタン、ガチャっという音と共に、誰かがわたしの横を通りすぎて行った。そして、すごいいきおいでソファの上の男を女性からひっぺがすと、いきなりグーで殴った。
「ショータ――! 人の彼女に何してんだよ!」
ショータ?
祥太???
殴られた祥太は、やり返すわけでもなく、床に座り込んだままでいた。
女性はソファの下に落ちていたニットのセーターをあわてて着ると、髪の毛をなでつけた。
その様子を見ていて、女性と目が合ってしまった。
メイクはしていたけれど、顔つきが随分若い。
この子……高校生だ。
誰だかわからない男は、女の子の手首を掴んだ。
「行くぞ!」
男はこっちには見向きもしないで廊下に向かいかけて、立ち止まると
「こんなとこ二度と来るもんか!」
吐き捨てるようにそう言って、リビングを出て行った。
床には、男が買ってきたコンビニの袋がそのまま放置されていて、袋の外にアイスが転がり出ていた。
すぐに後ろの方で玄関のオートロックが閉まる音が小さく聞こえた。
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