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 そして今。張り切って始まったのもつかの間、あたちは早々に疲れてしまった。  パパは身体が大きいのでチュウトハンパにくっつけてもすぐにばれてしまうだろう。広い背中の真ん中がベストだ。しかち流石ドラゴン、もうお部屋3つ分くらい追いかけてるけれどケハイで気付かれるので全く隙がなく、中々後ろをとれないのである! くっ、あたちだって半分ドラゴンなのに。そして一番肝心なのは、あたちはまだ飛べない! そしてまだ覚えている魔法も少ない!  え? 生まれた時から魔力がセイギョフノウ! 故に巻き起こる色んなハプニング! っていうお約束はですって? まあパパは隙あらばあたちに飛ぶ練習をさせようとユウドウしてくるけど、ないよそんなのは。ほらほら、鳥しゃんだって飛べるまでおうちでじっとしているでしょう? 同じ、それと同じ、、、はず。  とにかく、飛べないあたちには「パパに気付かれることなく飛ぶ以外のやり方でお魚しゃんをくっつける」しかセンタクシがないのである!  “湿った掌(フロッグマン)”、壁にくっつきながら考える。  パパの一日は大体決まっている。朝起きてご飯(お紅茶だけだったりもする)を食べたら渓谷の見回りをする。木に手を当てたり水を触ったりみんなに挨拶をして、戻ってきたら本の部屋で読書をしたり、薬の部屋で薬草を確認したり、と思ったら自分の部屋で本を広げて何か魔法のケンキュウをしていたりしている。あと、5日に1回くらい宝物の部屋で埃取りをしていたりする。(これ、ママが渓谷に来るまでは2日に1回のヒンドだったんだって! withシルキー情報)  大半を過ごすのはオウセツマだ。屋敷の妖魔たちとトランプしてたりママとお話ししてたり、お客さんが来るとティータイム。  お茶菓子はたまに町で買ってきたお菓子が並ぶ時もあるけど、大抵はママの手作りお菓子が並ぶ。クッキー、スコーン、マドレーヌ、プディング、ショートブレッド、キャロットケーキ、トライフル、ムース、クランペット、ビクトリアンサンドイッチケーキ……そしてガナッシュチョコレート。むふ。ついにやにやとしてしまう。ママの作るお菓子の中で一番に好きなお菓子だ。ガナッシュ、ああなんて素敵な響きだろう!  そんなママのガナッシュチョコレートお魚パイがかかっているのである、何としてもあたちはこのミッションをタッセイしなければならない!  と、ムロウしゃんがやってきた。パパに何か話して、二人そろって歩き出す。本の部屋の扉を閉められる前にあたちもそれに続く。  そして気付く。二人は玄関に向かっているようだ。お客しゃんだ。だがお客しゃんならそこの角を曲がってオウセツマに行けばいい、それが真っ直ぐに玄関に向かっているから、これはきっと外へ出るに違いない。  外ならピクシーやパック、エインセル等小さい妖魔がいてあたちのケハイが紛れる。ならばそこで決めるしかない! あたちは玄関の扉が開かれる瞬間を逃すまいと目を見開いた。
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