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Ⅲ
「あら、おかえりなさい、二人とも」
ガラス越しに目が合ったママが窓を開けてくれる。
ママはオウセツマでお裁縫をしていたみたいで、ドレスとハサミ、バスケットがテーブルの上に並んでいた。
「今日はとりわけ頑張ってきたぞ」
あたちのケープと自分の服を直すパパは何だかジョウキゲン。
肩を上下させて息をするあたちの頭を撫でたママが何か言いたそうににんまりと笑ったので、あたちもにやりと笑ったら、ママは全部分かったように「今日は特別なパイを焼いたんですよ」とパパの横に立って歩き出す。
あたちのミッションはタッセイされた! あとはママがそれを確認できたらミッションはコンプリートとなるのだ!
……ん? と思う。今度はじーっと見る。目をこする。
何でだ!? どんなに見ても”蜜蠟”でくっつけたお魚しゃんの紙が見当たらない! そんな、途中で剥がれてしまったのだろうか? いや、窓をくぐった時には確かにくっついていた、とするとパパがシャツを着直した時? なら落ちているとしたらオウセツマだ! まだだ、まだ今日は終わらない! あたちのガナッシュチョコレートタルトー!
あたち忘れ物をした! と声を上げようとしたまさにその時、前を歩くパパがむずむずと、腕が背中を掻き始めた。
「リズ~~、ちょっと背中を見てくれないか? 何か入っている気がする」
え? と聞きかえすママを待たずにパパはシャツの襟を拡げて屈んだ。その背中をママが覗き込む……何かを見つけたように、顔を上げたママがあたちを見て、にんまりと笑った。
……まさか? ママのキレイな手がパパのシャツの中に潜っていく――
「原因はこの子のようですよ、スピカ」
もう片方の手がなんとかって言う魔法ソウサイ魔法の光を放ち、潜っていた手が出てくると、その手は四つ折りの紙をつまんでいた。
「悪戯なお魚さんですねー」
「ほう? これは一体何だい、My daughter?」
パパが不思議そうな顔であたちに聞く。だからあたちは大喜びで叫んだ。
「ポアション・ダブリル!」
[The story goes on.]
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