この匙はまだ投げない

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 甥っ子がテーブル隅のケースから、紅しょうがを取り出した。自分の分だけではなく、あたしのチャーハンにも振りかけてくれる。  一口食べてみると……何だかすごくしっくりきた。紅しょうがのスースーした感じが、油のしつこさを中和してくれる。お腹の底の方が少し暖かいような気がするのは、その味のせいばかりではないだろう。  もしかして、あたしはずっとこれが欲しかったのかもしれない。 「時間切れは時間切れだからね。追加料金はきっちりいただきますよ」  あくまでぶっきらぼうな店主の言葉も、もうそこまで気にならなかった。  軽く横目で甥っ子を見た。相変わらず表情は読めない。結局、あたしのことをどう思っているのかもよくわからない。ただ無心に、レンゲを口に運んでいる。  あたしもレンゲを突き立て、さっきより食べやすくなったチャーハンをかきこんだ。なんだ、まだ食べられるじゃん。
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