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【2.試しに占いを】
そんな適当な感じでアリーが水晶玉を手に入れた翌日、友達のマーサが訪ねて来た。マーサ・グレイリー伯爵令嬢。成金伯爵家の令嬢として王宮では他の令嬢たちから鼻つまみ者扱いされているが、アリーはマーサのあっさりした性格が気に入っている。
マーサは親し気に尋ねる。
「エイプリルフールは何か考えてるんですか?」
「ええ、皆が期待してそうやって聞くんだもの。水晶玉をね、手に入れたわ」
「へえ、面白そうじゃないですか。『実は私魔女だったの』とかやるんですか?」
「そうよ」
「楽しそうですね、水晶玉か。ちょっと占ってみせてくださいよ」
マーサはまだエイプリルフールまで日があるにもかかわらず遠慮がない。
しかしアリーの方も、これは本番に向けてのいい練習になると思った。
「いいわよ。何を占ってほしい?」
「もちろん『運命の人』でお願いします!」
マーサは途端に目を輝かせて身を乗り出す。
アリーは笑った。
「最重要事項ね。だけど……どうやって使うのかしら。しまった、使い方聞き忘れたわ」
「何それ。使い方大事!」
「だって、エイプリルフールのおもちゃよ? あんまり本気にしないじゃない」
アリーは、デボラのせっかちペースにつられて大事なことを聞き忘れたことを反省しながら、言い訳がましく答える。
するとマーサは急にがっかりした顔をした。
「おもちゃ? じゃあこれ、偽物なんですか?」
「そりゃそうでしょう! 本物の訳ないわ」
「まあ、つまらないですね」
「そんな露骨にがっかりしないでよ、マーサ。でもいいじゃない、面白いかもしれないわ。見よう見まねで占ってみるわね。『水晶玉よ、マーサの運命の人はだあれ?』これでいいかしら」
アリーはわざと明るい声で適当に呪文っぽいものを唱えてみた。
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