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「これって……」
食い入るように水晶玉を見つめていたマーサが、掠れた声を発した。
アリーもはっと我に返った。
「あなたの運命の相手って、ライアン様ってこと? すっごいわね。名門ウィリアムズ伯爵家のライアン様と言えば、王宮中の令嬢たちが熱をあげるイケメンじゃないの。あなた令嬢たちに刺されるんじゃない? すごいわね!」
マーサは逆に「ははっ」と苦笑した。
「本当によくできた占い遊びですね。最初に今の私たちが映ってたってことは、これは今日この後のことって感じですよね。私、確かにこの後こちらのロバートソン商店に行く用事があります。そこで、ライアン・ウィリアムズ様にプレゼントをいただく? 私みたいな鼻つまみ者の成金令嬢が?」
マーサがおどけたように首を竦めて見せたので、アリーもつられて笑ってしまった。
「ふふ、でもこんな占いなら悪い気しないんじゃない、マーサ?」
「そうですね。現実と乙女の妄想を織り交ぜた夢の世界って感じです。これなら誰も傷つかないし、エイプリルフールにはもってこいのアイテムかもしれないですね」
「そうね。なかなか面白いじゃない!」
アリーは、良いものを手に入れたな、とほくほくした。妄想おとぎ話のような水晶玉占い。あり得ないけどそうだったら嬉しいな、という夢を見させてくれる。これはなかなか使えそうだ。
しかし、アリーには誤算があった。
この日の夕方に分かった事だったが、なんとマーサがロバートソン商店で、本当にライアン・ウィリアムズ伯爵令息に告白されたらしい。
水晶玉と何もかも同じ状況で!
マーサはあの水晶玉が真実を占ったということにとびきり驚いて、慌てて使者を寄越し手紙をアリーに届けさせたのだ。
マーサからの手紙を読んだアリーは一瞬ぞくっとした。
「この水晶玉が本物? エイプリルフールの小ネタじゃなかったの!?」
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