【4.不具合】

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【4.不具合】

 さて、自分の占いが見事にはずれてしまったアリーだったが、この不具合が他の依頼者でも起こってしまっては大問題だということに気づいた。  アリーの水晶玉は話題になっていて、いまだに依頼者がやってくる。アリーが「不具合があって無理」と言っても、「だって他の皆は当たったって言ってたわよ? 私には未来を言えないような何か不吉な事情でもあって?」なんて聞かれてしまうとどうにも断りづらい。  そこで、水晶玉を購入した『魔女のデボラの店』に不具合を調べてもらうことにした。  デボラはアリーと水晶玉を見ると、前回同様のせっかちな様子で近づいてきて「返品ですか? エイプリルフールには役に立たなかったですかね?」と水晶玉をアリーから取り上げた。  アリーはハッとした。 「あ、そうだった、元々はエイプリルフールの小ネタのつもりだったわね。すっかり忘れてたわ。えっと、役に立たなかったことはないのよ。ただね、ちょっと……。この水晶玉って、自分のことは占えないのかしら?」 「そんなはずはありませんけどね」 とデボラは首を(かし)げ、注意深く水晶玉を見た。  そして、急に()頓狂(とんきょう)な声をあげた。 「ああー!」  アリーは驚いて顔を上げた。 「何?」 「ごめんなさいね、私、変な設定を入れちゃってましたわ」  デボラが苦笑する。 「変な設定?」 「ええ。エイプリルフール設定」 「は? 何その設定」 「うん、テキトーな未来を見せて、嘘ですよーっていう」  デボラはきまり悪そうに頭を()いた。  アリーはへなへなと体から力が抜けるのを感じた。 「はは……ああ、そういう……」 「ごめんなさいね、水晶玉が勝手に未来に嘘をつくの」  デボラは申し訳なさそうだ。  アリーは合点(がてん)がいった。  なるほど、きっとアリーが自分を占ったのは4月1日だったに違いない。エイプリルフール設定がアリーにおちゃめな嘘を見せたのだ。  デボラはてへっと笑った。 「でも大丈夫ですよ、設定は4月1日だけですから、もう普通に占えるはずです。やってみましょう。水晶玉さん、この人の運命の人は誰?」  デボラは相変わらずせっかちな様子で、アリーに是非(ぜひ)も問わずに占いを始めてしまった。 「え、ちょっと……!」  アリーは突然すぎて戸惑(とまど)ったが、もうデボラは水晶玉に聞いてしまっている。  アリーは観念して恐る恐る水晶玉を覗き込んだ。――そして、ふうっとため息をついてから(つぶや)いた。 「だめよ。この水晶玉、まだ調子悪いみたい。前回と同じ。王太子様が見えるわ」  デボラは目を上げる。 「えー? もう普通に占えるはずですけど。前と全く同じ?」 「えっと、同じっぽいけど。ん? ちょっと違う……?」  同じ鮮やかな緑の季節だけど、前回とは少し緑の雰囲気が違うような。そして背景は……水っぽいけど、何となく前回の滝とは違うような――。えっ、違う? 違うってことは、えっ、もしかして?  デボラの方はアリーの様子に気付かず「前回と違うなら、ちゃんと当ってると思うけどなあ?」と()に落ちない顔をした。 「ちゃんと当ってる?」  ということは。アリーの心臓が早鐘(はやがね)のように鳴り出し、頭の中が真っ白になった。
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