【3.自分の運命の相手は】

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「水晶玉さん、私の運命の相手は誰?」  アリーは言ってしまってからドキドキする。水晶玉に映るものを一秒たりとも見逃したくない気持ちでじーっと水晶玉を見つめた。  なるほど、他の依頼者たちもこんな気持ちだったのか。  するといつものように、水晶玉の中に(もや)が渦巻き出し、そして何かの像を形どり始めた。  アリーは固唾(かたず)()んで見守っている。  やがて(もや)はまとまりだし、濃淡がはっきりしてきて――。  最初の映像は神詣(かみもう)でだった。霊山山腹(さんぷく)の大神殿へと、奥深い山道を身なりの良い人たちの行列が行く。  新緑の季節とはいえ、山道は生い茂る樹々で薄暗い。そんな中を行列の人々は厳粛な空気を(まと)ってしずしずと歩いて行くのだった。  そして水晶玉の映像は次に移った。  樹々の隙間から急に白っぽい背景に変わったのでアリーは「ん?」と思って目を()らした。よく見たら、それは『滝』だった。水しぶきが散り背景が白っぽくなっているのだ。  そして滝つぼの脇の岩場で、一人の男性が怪我をした足を(かば)うようにして座っている。水晶玉がその男性の顔を映すと――なんとそれは我が国の王太子だった。 「え、王太子様!?」  水晶玉の中のアリーが王太子に駆け寄ると、王太子はほっとしたような目をアリーに向けた。水晶玉の中のアリーは何やら言いながら、王太子の腕を引き自分の肩を貸そうとしていた。  そして水晶玉の映像はさらに次へと移った。  霊山山腹(さんぷく)の大神殿の中庭である。真っ白な小石を敷き詰め、大小さまざまな形をした岩がバランスよく配置された、殺風景な割には緊張感漂う中庭だ。  王太子は一つの岩に腰かけていた。足には包帯がまかれていた。  水晶玉の中のアリーが遠慮がちに王太子に近づいて行った。王太子は微笑んで何か言い、アリーが恐縮して(ひざまず)こうとするのを、さっと腕を伸ばして引き留めた。そのままアリーに隣の岩に座るように促すと、手を伸ばしてそっとアリーの髪の毛に触れた。水晶玉の中のアリーは驚いて王太子を見つめ返し――。  水晶玉を覗き込むアリーの心臓がトクンと音を立てた。  これは、まさか!?  まさか王太子様が運命の相手だと言うの?
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