【3.自分の運命の相手は】

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 水晶玉に映った神詣(かみもう)では、5年に一度新緑の季節に行われる宮中行事だ。今年もすでに日程が決まり、選出された王宮メンバーが昔ながらの手順で参拝することになっている。  水晶玉があまり占いに関係のない映像を見せることはないから、きっとこの日に、アリーはどこかの滝で怪我をした王太子を(たす)け、そしてそれをきっかけに王太子と親しくなるのだろうと思われた。  アリーは半信半疑だったが、王太子が怪我をする未来を知ったのだということにふと気付き、自分の運命の相手の前に「まずは道義的に王太子を助けなければ」と思い至った。  しかし、神詣(かみもう)での日に滝で王太子を助けるにしても、まずはこの滝がどこにあるかを知らなくては助けに行けないと思った。  そこで霊山付近の地元住民に道案内を頼み、近隣の滝を歩いて探すことにした。  本当は地元住民に水晶玉の映像を見せて場所を聞いた方が早いとは思ったが、かなりプライベートな内容なので無関係な者にはリスクが高く見せられない。そこで(みずか)ら出向くことにしたのだ。  侯爵令嬢が自ら滝探し!ということで、家中(かちゅう)の者はだいぶ(いぶか)しんだが、アリーは(ひる)まない。  案内された一つ目の滝は、水晶玉の光景と違った。  二つ目の滝も、違う  三つ目の滝を訪れて、やっとアリーは「ここだ!」と思った。  そして神詣(かみもう)での日。アリーは「人命救助」と自分に言い訳しながら、ドキドキ半分でその滝へ行ってみたのだった。  しかし、王太子はいない。  アリーは「あれ?」と思ったが、まあ時間が前後することもあるだろうと、もう少し待ってみた。  しかし待てども待てども誰も来ない。  結局その日一日、滝周辺では何のイベントも起こらなかった。お(とも)の者は面と向かっては何も言わなかったが、内心アリーに文句いっぱいなのがびしばし伝わる。  アリー自身も「嘘だったかー」とだいぶ落胆していた。  と同時に、 「なんで私だけ占いがはずれるの? 持ち主のことは占えないの?」 と悲しく思った。  映像としてはあんなにはっきりと見えたのに!  あの滝だと思ったけど、実は別の滝だったとか?  なんとなく占いを(あきら)めきれないアリーは、あまりにも気になったから、王太子の側近を務めている幼馴染(おさななじみ)の男友達に「王太子様は神詣(かみもう)での日は滝に行ったか」と聞いてみた。  幼馴染(おさななじみ)怪訝(けげん)そうな顔をした。 「ずっと王太子様と一緒にいたけど、滝には行ってない」との返答だった。  アリーは「水晶玉、間違いじゃないの!」と叫びそうになるのを必死に(こら)えた。しかしアリーは「まあ人生ってそんなもんだから」となんとか自分を(なだ)めて、あんまり何でも期待するのはよくないと自分を(いまし)めた。
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