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「変な設定?」
「ええ。エイプリルフール設定」
「は? 何その設定」
「うん、テキトーな未来を見せて、嘘ですよーっていう」
デボラはきまり悪そうに頭を掻いた。
アリーはへなへなと体から力が抜けるのを感じた。
「はは……ああ、そういう……」
「ごめんなさいね、水晶玉が勝手に未来に嘘をつくの」
デボラは申し訳なさそうだ。
アリーは合点がいった。
なるほど、きっとアリーが自分を占ったのは4月1日だったに違いない。エイプリルフール設定がアリーにおちゃめな嘘を見せたのだ。
デボラはてへっと笑った。
「でも大丈夫ですよ、設定は4月1日だけですから、もう普通に占えるはずです。やってみましょう。水晶玉さん、この人の運命の人は誰?」
デボラは相変わらずせっかちな様子で、アリーに是非も問わずに占いを始めてしまった。
「え、ちょっと……!」
アリーは突然すぎて戸惑ったが、もうデボラは水晶玉に聞いてしまっている。
アリーは観念して恐る恐る水晶玉を覗き込んだ。――そして、ふうっとため息をついてから呟いた。
「だめよ。この水晶玉、まだ調子悪いみたい。前回と同じ。王太子様が見えるわ」
デボラは目を上げる。
「えー? もう普通に占えるはずですけど。前と全く同じ?」
「えっと、同じっぽいけど。ん? ちょっと違う……?」
同じ鮮やかな緑の季節だけど、前回とは少し緑の雰囲気が違うような。そして背景は……水っぽいけど、何となく前回の滝とは違うような――。えっ、違う? 違うってことは、えっ、もしかして?
デボラの方はアリーの様子に気付かず「前回と違うなら、ちゃんと当ってると思うけどなあ?」と腑に落ちない顔をした。
「ちゃんと当ってる?」
ということは。アリーの心臓が早鐘のように鳴り出し、頭の中が真っ白になった。
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