愛しの四月一日

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「ごめんね。もう会えない」  彼女、莉子は俺にそう言った。  俺、雄二は言葉を搾りだして彼女にこう言った。 「最悪のエイプリルフールだよ」   海が見える公園に日付が変わるチャイムが周囲に響く。  三月三十一日の夜中、四月一日の初っ端に俺はフラれたのだ。  俺は気付いたら電車の中にいた。  ガタンゴトンと人々を乗せる最終列車は妙に賑わっている。  四月は新年度の日、入学式や入社式が行われる日だ。社会人は明日に備えて既に就寝している者が殆どだろうから、騒いでいるのは多分学生だ。俺も大学生の頃はそんな感じだったからよく分かる。  莉子とは大学の入学式で出会った。  黒くて長い髪をなびかせて歩く美しい少女に俺は一目惚れだった。  自慢ではないが、俺の容姿は良くて並みの中。とてもではないが彼女とは釣り合うとは思っていなかったが、何度かの幸運が重なり、彼女と付き合うことになり、俺の大学生活は幸せの絶頂期といえた。  幸運なことに同じ会社に就職が決まったので、ある程度生活基盤が安定すれば同棲の後に結婚…という将来設計まで夢想していた始末である。  そんなわけで、フラれた原因には全く心当たりがない。まさに青天の霹靂だ。  俺は呆然としたまま、騒がしい電車に揺られるしかなかった。
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