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マジで?
本日2回目になるその言葉。
さっきのが心臓飛び出る3回目だと思っていたのだが、それを上回る衝撃よ。
純白のウエディング姿とは相反し先程から遥の目と口は驚きのあまり開きっぱなし。
いつもより念入りに化粧されたからかまつ毛が重く感じるが、その重力に反して遥の目は開かれたままでガッツリドライアイ覚悟で目の前の右京を珍獣のごとく見つめる。
「何だよ」
「え?今、聞き間違い?右京、好きって言った?」
「言ったよ。」
はぁ〜???
いや、待って。
いつも毒という毒を吐き、遥のメンタルなど知った事かと正論をぶちまけ滅多刺ししてきた右京からまさかの告白。
これって。
まさか、新手のドッキリ?
周りをキョロっと見回すが当たり前に普通の壁がある控室だ。
「お前さ、ドッキリじゃないから。
それに、今までだって俺は大事にしてきたぞ。
お前が変な方向に行かないように敢えて厳しい事言ったかもしれんが。」
情けないような微妙な顔をした右京は「とにかくお前には幸せになって欲しかった」そう真面目な声で告げた。
真っ直ぐに遥を見つめて告げる右京の真剣な表情に、恥ずかしさからなのか急に何やらブワっと顔が赤くなり目を見る事が出来ない。
えぇ〜
いや、幸せにって言われても。
新郎に逃げられた自分には無理だしその予定もありはしない。
「う、ん。右京気持ちは有難いけど、私幸せになる予定なくなったし、何かごめん。」
的外れな回答なのは重々承知しているが、自分を好きだと告げた相手の願いを叶える可能性が1ミリも無くなり今になって自分が情けなくなり泣けてきた。
「よし。ちょっと待て」
こちらはこちらで的外れな台詞を吐き、右京は少し離れた場所に立った。
そして突然携帯を手に取り誰かに電話をかけ始める。
「もしもし、俺。逃げたぞ相手。あぁ。だから、そうだって。は?お前さっ!マジでっ。
とにかく、もう無理だから。貰うから。以上」
何やら相手はギャーギャー言ってそうな空気だったが無理やり通話を終えた右京は遥の元にサッと戻ってきた。
「遥」
「え?はい。」
「今から俺が言う通りにしろ。分かった?」
「へ?」
「返事は?」
「あ、はい」
よし。
そう言って右京はドレス姿の遥の手を取り式場のスタッフの元に向かい驚きの提案をすました顔と極上のスマイルで告げた。
マジで?
本日もう何度目か分からないその言葉。
遥の前には右京。
そして手を繋ぎ神父の前で本日2回目の誓いの言葉。
え〜と、これって。
「遥。何も考えるな。大丈夫」
右京はそう言って優しく遥に笑う。
そっか。
大丈夫か。
右京が言うならばそうだろう。
昔から右京が大丈夫だと言えば不思議と大丈夫だった。不安だらけの大学受験も右京がいつも大丈夫。絶対受かる。そう言ってくれたから頑張れたし社会に出て揉まれに揉まれて息が出来なくなりそうな時も、遥は大丈夫。そう言ってくれたからやり過ごせた。
昔から兄よりも厳しいかったけれど、いつも遥の側にいて何より寄り添ってくれていたのは右京だ。
とくに、父が居なくなってからは遥の隣にはずっと右京が居てくれた。だから、寂しくはなかった。
愛かと言われたらまだよく分からない。
だが、右京が隣にいて大丈夫と言うならば
きっと大丈夫。
「では、誓いのキスを」
幼馴染との初めてのキスに狼狽える遥とは違いガッツリ遥の腰を抱きしめ深いキスをする右京に翻弄され腰砕けにされた。
何ちゅうエロいキスすんのよ。
右京は軽々と遥を抱き上げてチャペルの扉に向かい歩き出す。
招待客もいないましてや母親さえもダウンしている中、右京と2人笑いながらバージンロードを進む。
まさに2人がチャペルから去りゆくその瞬間
祝福の鐘が鳴った。
去り行く2人の姿を見ながら神父は神に祈る。
若き2組のカップルに幸在らん事を。
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