泣けない君は、嘘もつけないから

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「ミラ、契約は昨日で終わった。綾瀬とのことは、こうしなきゃいけなかった」  揺らぐミラの瞳に、それでも柏木はためらいなく言った。中途半端な優しさはかえって傷つけることになる。綾瀬だってそうだ、生半可な気持ちでアンドロイドに想い寄せるべきじゃない。最終的に傷つくのは、捨てられる方なのだ。  せめて次の契約まで、少し日数をあけさせるか。その間に切り替えられたらいいが。可能な限り記憶整理はしたくない。  立ち上がり、自分のデスクに向かおうとした柏木だったが、事務室のドアがドンドンっと強くノックされ、「あの!…………し、失礼します!」という声とともに大きく開けられた。  返事も待たずに。こんなことするのはミラくらいだが、彼女はここにいる。となると────  ドアの方を見た柏木は、目を見開く。 「す、すみません!ミラさんはいますか!」  そこにいたのは、肩で大きく息をする綾瀬だった。
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