泣けない君は、嘘もつけないから

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 聞く限りでは大人しい青年だったのに、まさか、直接ここに乗り込んでくるとは。驚いていた柏木だったが、ゆっくりと息を吐き出して切り替えると、鋭い視線を綾瀬に向ける。 「ミラになんの用?スクールとの契約は切れたから、君とミラはもう無関係のはずだ」  一際低い柏木の声に綾瀬はあからさまに動揺するが、ぐっと拳を握りしめると、震える声で言った。 「はい。でも…………どうしても、ミラさんに謝りたくて、それで来ました。俺の勘違いで、ミラさんを…………傷つけて、しまったから」 「勘違い?」 「…………彼女の言ったことが、勝手に嘘だと思いこんで…………でも、違うって思って。彼女は、嘘がつけないから。たとえ、エイプリルフールだとしても」  いつの間にか、綾瀬はミラを見ていた。 「ごめん、いきなり怒って…………ありがとう…………すごく、嬉しかった」  はにかむような綾瀬の笑顔に、ミラの瞳が揺らぐ。  そんな二人の様子を見ていた柏木は、腰に手をあてながら大きくため息を吐いた。 「それで、用件は終わり?だったら」 「あの!お願いがあって!ミラさんを…………僕に、引き取らせてもらうことはできますか?」
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