泣けない君は、嘘もつけないから

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 なるほどな。  柏木はじろりと綾瀬をにらむ。その視線に綾瀬が怯えた様子を見せるが、かまうことなく告げる。 「うちの会社は貸し出し専門だ。販売はしない」 「…………だったら、貸し出してもらうことはできますか」 「いくらすると思ってるんだ」 「なんとかします」  力強くはっきりと言い切った綾瀬に柏木は目を見開くが、すぐに切り替え、突き放すように言い返した。 「学生とは契約しない」  返す言葉がなくなりうつむいた綾瀬を、柏木はじっと見据える。術を探しているのか。その間も、彼の拳は強く握りしめられたままだ。その手をしばらくながめていた柏木は、ふーっと息を吐くと、独り言のように言った。 「…………長期は無理だが、不定期でなら貸し出してもいい。ミラはしばらく他に貸し出す予定はないから、金が準備できたらくればいい」 「え…………」 「ただし、自分で稼いだ金だ。誰かに借りたりしたら、もう二度と貸し出さない」 「は、はい!ありがとうございます!!」
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