泣けない君は、嘘もつけないから

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 アンドロイドのミラは、嘘がつけない。嘘の定義は難しく、他のアンドロイドも主が命令したものでなければつくことは難しいのだが、ミラにはそれが一切できない。命令であろうと決して嘘をつくな。そういう風に作られているのだ。泣けないのも、最初の主が涙が嫌いだという理由で、泣けないよう作られた。すぐ泣きそうな表情をするのに、泣くことはできない。  それ以外も、ミラは特殊なアンドロイドだった。毛先だけピンクの白い髪、吸い込まれそうなエメラルドグリーンの大きな瞳、すらりとした長い手足。人間離れした容姿は人形のようで、かつての主の強いこだわりだった。外見にこだわるのは他のアンドロイドでも見られることだ。ただ、問題はその中身だ。規格と違いすぎて、システムをアップデートしようにもできない。仕事にあわせて細かなシステムを変えることもできず、かろうじてできるのはそれまでの記憶を消すことくらい。しかも完全には消せず、どうしても記憶の断片が残ってしまう。粗悪なものだった。  規格が統一される前に製造されたものは柏木のような技術者泣かせだったが、ミラは特に難しいものだった。
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