泣けない君は、嘘もつけないから

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 両思い。だからといって、はいそうですか、とはいかない。アンドロイドの個人所有はその高額さから、富裕層の特権みたいなものだ。 「ローンとか」 「維持費もかかるからな。それに……」  ミラは、外面重視という特殊さからか、個人所有の期間が長い。何件かの個人所有を経て、結果、柏木の親が経営するリサイクル会社に持ち込まれた。リサイクルと言っても、バラバラにして、使えるパーツだけ取り外すのだ。その時、まっすぐこちらを見ていたミラの瞳に、思わず腕をとり、親に向かって叫んでいた。自分がなんとかする、と。なんの経済力もない学生だったくせに。自分だって周りが見えていなかった。でも、今でもあの時の目を、柏木は忘れられない。  柏木は、アンドロイドの再利用会社を立ち上げた時、契約して貸し出す、という形にした。販売してもし個人所有になった場合、アンドロイドの廃棄は持ち主の自由になる。だから、販売ではなく貸し出しにした。トラブルを起こしても、必ず自分の元に戻って来るように。そのままの姿で。
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