泣けない君は、嘘もつけないから

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「私、なにがなんだかわからなくて。ちゃんと気持ちを伝えたのに、綾瀬さん、急に怒り出して────」  そう言って、ミラはぎゅっと唇を噛み締める。泣いてしまえたら楽だろうけど、それができないミラはふるふると首を横にふったり、顔を覆ったり、やり場のない感情に全身で悲鳴をあげているようだった。  そんなミラに、柏木は事務的な口調で続ける。 「今日がエイプリルフールだからだよ」 「エイプリルフール…………」 「あぁ、嘘をついてもいい日だから」 「嘘、を?…………それって!」  柏木が言わんとすることを理解したミラ。膝の上で握りしめた拳が震えていた。 「ミラの言葉を、綾瀬は嘘だと思った。反対だと。だからショックを受けて、怒り出したんだろ」 「嘘だなんて、そんな……私、ちゃんと言ったのに」  だからだ。  仕事だからと、それまでミラが必死に言わなかった言葉。そのミラからの突然の告白に、綾瀬は、喜ぶと同時に驚いたはずだ。そして、気がついた。今日が4月1日ということに。
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