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泣けない君は、嘘もつけないから
「柏木さん、ミラが来てます」
作業場から事務室へ戻った柏木は、部下のハヅキの言葉にカレンダーを思わず確認した。3月いっぱいでミラは今の会社と契約が切れるが、まだ1週間近くある。契約期間内にミラが来たということは、トラブルだ。
ミラのトラブルは珍しくないが、まさか最後の最後までとは。
がしがしと頭をかく柏木に、ハヅキは追い討ちをかけるように言う。
「また、泣きそうな顔をしてます」
だろうな。
だいたい、うちへ助けを求めてくる時、ミラは泣きそうな顔をしているじゃないか。ただ、泣きそうな顔、なんてかわいいものじゃない。完璧な容姿をした彼女の、唯一の欠点とも言うべき表情を浮かべる。
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