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「おぎゃあぎゃあぎゃあぎゃあ!」
ああ、うるさい。本当にうるさい。深夜三時。娘の花凛がずっと泣いている。隣のベッドでは夫がもそもそと起き上がり、こちらの様子をうかがっているのが空気でわかった。
「……花菜子、起きてる? 花凛、お腹すいたんじゃないか?」
そんなこと──
「わかってる!」
花凛の泣き声と夫のオドオドした声にいらついて布団をはねのける。そんなことわかってるわかってるわかってる。でも、うちの娘は変だ。ミルクを飲む量が多すぎる。そのくせ、ちっとも大きくならない。まるで飲んだミルクがどこかへ消えてしまったように。
ため息をこぼしベッドから足を床につけた。スリッパをはき、イライラとしながらキッチンへ向かう。その間、泣いている花凛をあやすのは夫の仕事だ。それくらいやってもらわないと困る。ううん、うちの夫は割とよくやっているほうだ。泣いていれば率先してあやしてくれるし、オムツだって替えてくれる。
ただ、ミルクだけはだめなのだ。どうしてか花凛はわたしの手からしかミルクを飲まない。夫もだめ。義母もだめ。当然うちの母親もだめ。だから、わたしはどこへも出かけられない。出かける時は花凛も一緒。まったく気が休まらない。
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