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あれは、わたしが小学六年生の時だ。
貧乏な家の子の──苅田彩月。
いま思えば、貧乏だったのではなく虐待を受けていたのかもしれない。けれど、たった十二歳の子供にそんなことがわかるわけもなく、わたしたちは彼女のことを『ガリ』と呼んでいじめていた。
いつもお腹をすかせていた彼女はガリガリに痩せていて、目も落ち窪みぎょろっと不気味な目をしていた。その風貌だけでいじめのターゲットになることは必然で、一限目からお腹をぎゅるぎゅる鳴らしている彼女のことがわたしたちは大嫌いだった。
わたしたちは、彼女に充分な量の給食を与えなかった。給食当番になれば、彼女の皿にはほんの一口分しかよそわなかったし、そうでない場合は、彼女の皿からおかずを取り上げた。
「やめてよ。どうして、そんな意地悪するの。わたし、お腹すいてるんだよ?」
彼女は必死に訴えた。けれど、誰も耳を貸さない。先生もいじめに関わりたくなかったのか、それとも気付いていなかったのか、わたしたちに注意をすることはなかった。
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