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「あー、おなかすいたなあ。きょうのばんごはん、なあに?」
花凛が笑いながらわたしの顔を覗きこんでくる。そのぎょろっと大きな目が、苅田彩月と重なって、わたしは悲鳴のような声をあげていた。
「やめて……っ! ごはんを食べさせなかったのは、わたしじゃない! あなたのお母さんじゃないの!」
そうよ。わたしじゃない。違う。わたしじゃない!
「ちがうよ? まえのおかあさんはいっぱいたべさせてくれたもん。でもね、それじゃあ、おなかがいっぱいにならなかったの」
「え……」
「たべてもたべてもおなかがすくの。だから、きゅうしょくたのしみにしてたのに、おかあさんがたべさせてくれないから、それで、うちにかえってまたいっぱいたべるでしょ。おかあさんとおとうさんのぶんまでたべるから、うちはびんぼうになって、しゃっきんして、もうごはんたべさせられないっていうから、だからしんじゃったんだ。こんどはおかねもちのうちのこになろうって」
道路がぐにゃりと歪む。心臓がばくばく鳴って苦しい。いまにも倒れそうだ。
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