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第一日
「コンスタンツェ殿下、ようこそ我が国へおいでくださいました。アレクサンドル陛下に代わり、家令の私がご説明いたしますご無礼をお許しください」
ああ、またお会いすることができなかった、とコンスタンツェは少し気を落とした。故国と簡単に行き来できる距離ではないため、コンスタンツェはこれまで結婚相手のアレクサンドルのことを絵姿でしか見たことがない。軍神の二つ名を持つ、金の髪に翠の瞳の若き皇帝。
言葉が違うため、コンスタンツェはアレクサンドルとの結婚が決まってから必死に勉強した。日常会話は全く問題ないと教師に褒められたが、特殊な言葉の解釈には、まだ自信がない。
「婚儀の七日前においでいただいたのは、準備をしていただくためです」
「婚礼についてほとんどお任せしてしまい、大変申し訳なく思っております。今から全力で準備にあたりますので」
「婚礼の準備は既に整っております。コンスタンツェ殿下のお手を煩わせるようなことはございません」
「それでは何を、準備すればよろしいのでしょう」
コンスタンツェが問うと、家令のモノクルがきらりと光った。
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