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「へい、おまち」
ものの数分もしないうちに、店主さんはカウンターの中からラーメンと餃子を出しました。
もちろんいつもと同じ量、同じ味つけです。
お客さんが元気がなくても店主さんには何も関係ありませんし、優しい言葉もかけません。
私は、お客さんをとっても心配してますよ。
例によって、お客さんは私には無関心ですが。
ちょっぴり私がすねかけた時に、店主さんのラーメンと餃子が私の上に置かれました。
このお店ではいつも無視され、空気状態の私ですが、この瞬間は誇らしい気持ちになります。
私がいなければ、店主さんはお客さんに料理を届けることが出来ませんから。
暗い顔をしていたお客さんも、味噌ラーメンを夢中ですすっています。店主さんのラーメンはおいしいでしょう。
私を覗き込むようにしてラーメンを食べているお客さんは、汗を流しながらも食べています。
私は店主さんのラーメンや餃子を食べている時のお客さんの顔が好きですよ。
明るい顔で来た人も、暗い顔で来た人も、みんな幸せそうな顔になりますから。
おいしいものを食べれば、幸せな気持ちになります。
どんな時だって、お腹は空くのです。
お腹が空いたら、ちゃんとごはんを食べてくださいね。
できれば他のお店に行かないで、私に会いに来てくれると嬉しいです。私はいつだってこのお店から一歩も動かず、あなたたちを待っていますから。
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