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アンは笑顔をリグに向ける。リグはそれをみて、より不安に駆られた。
アンは受け取った肉切り包丁を手に持ち、ジェイクスに近づいた。式には十数人ほどの村人が参加しているが、その中でリグだけが、彼女が一礼を飛ばしていることに気が付いていた。
アンはさっきリグがやっていたのと同じように、刃先を左腕をつなぐ肩甲骨付近にあてた。彼女の小さな手では肉切り包丁を両手で持つ必要がある為、肉を支えることができずに、刃先がぐらぐらと揺れて安定しない。見かねたリグはすぐに彼女の傍により、代わりに切ろうとしている部位を抑えてやった。アンは申し訳なさそうな表情のまま、腕に力を込めて、肉を剥いでいく。リグほど綺麗には出来なかったが、見よう見まねで、なんとか自分の取り分は確保することができた。リグは「偉いね」と小声でアンに囁いたのちに、彼女を連れて元いた位置に戻っていった。
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