青空が泣いた日

8/11
前へ
/11ページ
次へ
 その後も式は続いていき、長机の上に置かれたジェイクスの肉はどんどん小さくなり、やがて無くなってしまって式は終了した。解散した次の日に、アンのことが気がかりだったリグは、彼女の家を訪れた。  ――子供たちの集落では、村人は一人一軒家を持っている。孤独を嫌って何人かで合同生活をしている者もいたが、それでも一人一軒の持ち家があった。村にはレーシュという十八歳の少年が住んでおり、彼は大量に生えてくる樹木を使って家を建てたり、家具や遊具を工作するのが趣味だった為、村には空き家が出るほどに木造の建物が林立していた。――無論、都市部の建築物と比べれば設計が荒く、強風ですぐに壊れてしまうこともあったが、子供たちにとってはたまに降る雨さえ防げれば充分だった。  リグはアンの家に着くと、木製の扉を数回叩く。すると扉が開き、アンが顔を出した。彼女はリグをみて「どうしたの?」と彼に尋ねる。  リグはアンの背後に見える部屋の様子を一瞥し、先日の入刀式でアンがもらったジェイクスの肉が紐で吊るされた状態で保存されており、まだ手をつけられていないことを確認した。 「君が心配になって来たんだけど、あの肉はまだ食べてないんだね? この時期だと、はやく食べないとすぐ駄目になっちゃうよ」  そう言われるとアンはバツが悪そうに俯き、言葉を噤んだ。そのアンの表情をみて、リグは何故だか胸の奥でもやっとしたものがせり上がってくるような感覚がした。  そしてリグは、原因不明の焦燥感に耐え切れず「そういえば」と別の話題を切り出した。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加