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「お腹空いた」
こう言えば幼い頃から私の周りにいる大人たちは必ず食べ物をくれた。
例えば、ピザが食べたいと言えば母が街に出て買ってきてくれ、お肉が食べたいと言えば父が猪を獲ってきてくれてそれを焼いて食べる。勿論お肉も街に出て買ってくることもある。野菜が食べたいと言えば野菜農家の人たちが野菜をくれ、魚が食べたいと言えば村の漁師たちが魚を獲ってきてくれてくれる。
しかし妹があれこれ食べたいと言っても誰も買ってこないし作らない。なので妹は自分のお小遣いで買ってきて作っている。
村なので生活するのには不便なのだが、とにかく食べ物には困らないし、村の人たちは皆私をかわいがってくれるので、この村が大好きだ。
だが妹はこの村が嫌いみたいだ。
妹は私に
「お姉ちゃんこんな村早く出て行こうよ。お店はないし不便でしょ。小さな病院はあるけど、大きい病気になったら診てくれる医者もいないし大変だよ。」
と何回も言われているが、そもそもまだ13歳の私と12歳の妹は両親がいないと生きていけない。
私は特に困ってもいないし、村には友達もいるし、大人たちは優しいので私は出て行く気はない。
何故妹がこんなこと言うのか私には分からないが、きっと妹は私が昔から大人たちにかわいがられて育ったことが気に食わないのだろう。
食べたいものも買ってもらえない、作ってもらえないから。
私は村が大好きだし、出て行かない。
「何回も同じこと言われたってしつこいし、だったらあんた一人で出て行けば?」
と私は言った。
明日は私の14歳の誕生日だ。
母が豪勢な食事を用意してくれるらしい。
村の人たち総出で祝ってくれるみたいだ。
楽しみだ。
朝起きると両親から誕生日おめでとうと言われた。
私は嬉しかった。
お腹空いたので早く朝食を食べようと思った。
しかしテーブルを見るといつもは朝食が用意されているのに今日はまだなかった。
「あれ?朝ご飯は?」
母に聞くと今日はまだ作っていないらしい。
私は母にお腹空いたから早く作ってと言った。
「おぉ、こりゃいい肉だな」
「美味そうだな」
と背後から声が聞こえた。
振り返ると何故か村の人たちが総出で家に上がっていた。
私は「お肉は何処にあるの?」と聞くと両親含めそこにいる全員私を指差した。
………………
「やはり肉料理といったら焼き肉ですね」
「こっちのすき焼きも美味しいですよ」
「小さい頃からたらふく食べさせて立派に育てたかいがありますね」
「お金は結構かかりましたけど、こんな美味しいと気になりませんね」
「最初はこんなお祭り驚いたけど、食べてみたらこんな美味しいお肉があるなんてビックリしたわよ」
「やっぱ食べてみないと分からないわよね」
「いやーご両親には感謝してますよ。娘さんの肉を食べさせてくれて」
「いえいえ。僕たちも昔から人肉食べさせて貰ってきましたから」
「そうですよ。14年前は田中さん家の長男のお肉だったじゃない。こちらこそありがとうございました」
「次の人肉祭の肉は決まってるのか?」
「3ヶ月前に産まれた小林さん家のところの長男よ」
「小林さん14年後はよろしくお願いします」
「こちらこそ宜しくお願いします」
「あら?咲全然食べていないじゃない。せっかくお姉ちゃんのお肉が食べられるのよ。美味しいからたべなさい」
「……。」
「……。頂きます。」
「!!?美味しい!!もっと頂戴!!」
(あーまた14年後が楽しみだなー)
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