それぞれの恋

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夜、喜子さんと待ち合わせのお店に行くと「こっち〜」と手をひらひらさせている。 「お疲れ様です。喜子さんと飲むのは久しぶりですね」と言いながら、私もビールね。と店員に声をかける。 「エミちゃん、ごめんね急に誘って」 「今朝、院長先生もいらしたから何かあったのかと思って」 「それね、うふふ」と何やら嬉しいそうな顔。 「何かいい事なんですか?」 「実は、私ね院長先生の紹介でお見合いしたの。それで相手から是非お付き合いをしたいと返事が来たって」と少し赤くなりながら報告してくれたので、私も嬉しくて「良かったですね」と喜子さんの手を握ってしまった。 相手は40歳の外科医。 仕事が一番でいるうちに婚期を逃したらしく、院長先生と飲んだ時に、いい人がいたら紹介してくれと頼まれたらしい。 そこに私達の愚痴が耳に入り、喜子さんがダメ男と別れたと聞いたので声をかけてかけてくれたようだ。 「お会いした時にね、とても40歳には見えなかったのよ。とっても若々しくて優しい眼差しでね、話し方も穏やかな人だったの」と、うっとりしながら話してくれる喜子さんは、すごく輝いて見える。 これが恋をする女性は綺麗になる。ってのかな。 「エミちゃんは、パーティーって言っていたけれど、どんなパーティーなの?」 「それなんですけど、ちょっと頼まれて彼女のフリをするんです」 「え?彼女のフリ?」 「ひょんな事で知り合った人に頼まれたんです。」 詳しく話したいところだけど、そうなると私の素性も話さなきゃだし。 こんな所でバレてはクリニックです働けなくなる。 それだけは避けたいので、話題をすり替えることにしようと「喜子さんは、もし結婚する事になったら仕事はどうするんですか?」と聞いてみた。 「え〜そんなのまだ決めてないし、それに結婚までなんてまだまだだ先の事よ」と嬉しそう。 喜子さんに、お相手の方から電話が入ってのでお開きにして帰宅。 明日は、みささんと会うから少し緊張。
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