心友

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心友

「エミさん、今日は心友様が予約されていますよね」 「静香ちゃん、その心友ってのやめて貰えないかな?」 「だって何かにつけエミちゃんと僕は心友だから。って言いますもん」 そう、奴は何かにつけ「エミちゃんと僕は心友だから」って言う。 そして「ご飯に行かない?」とか「遊びに行こうよ」って誘ってくる。 普通さ、付き合ってもいない女を誘うか? この間なんて、どうしても話を聞いて欲しいって言うから居酒屋に行った。 「婚活サイトで知り合った女の子とデートしたんだけどさ、仕事が仕事だろ?だからデートが急にキャンセルになったりするし、LINEも直ぐには返せないって言ってあったのに、どうして会えないの?とか返事ができないのはなんで?って言うんだよ。」 うんうん、そうなるよねぇ。 「でもエミちゃんは、約束の時間に遅れても本を読んで時間を潰していたし、LINEの返事が滞ってもなにも言わなかったじゃん」 ま、それは私もLINEの返事を返すのが遅いからねぇ。 それに読みたい本があったからチャンスって思って読んでいただけだから、ちょうどよかったんだよね。 彼氏じゃなかったし。 「あのさ、弁護士さんとお付き合いってなれば、友達とかに自慢したいじゃない?あんたさ見た目もいいし、デートしてその内容をSNSにあげたいんじゃないの?それを仕事だからデートをキャンセルされたら怒るわなぁ」 そう、この心友は弁護士。 背は高く見た目も良い。 名前は、北林 光一朗32歳 高校を卒業してフリーターをしていた時に、父親から「就職するか大学に行くかどっちか選べ」と言われて大学に行き、司法試験を受けたら受かったから弁護士になったらしい。 依頼人には、とても真摯に対応して信用もあるようだけど。 いまいち女の人の気持ちがわからないんだよね。 「そんな事を言ったって、依頼者から連絡が来たら優先するのは当たり前だろ?」 うん、確かにそう。 「そうだけどさぁ、女の子はデートだからお洒落して楽しみにしていたんだと思うのよ。 だから、次のデートでちゃんとフォローしないとね」と言ってはみたものの。 イマイチ納得していないように見える。 「ねぇ、いつもどこでもデートしてるの?」と聞いてみた。 「どこって、彼女が行きたいって所だよ?なんで?」 「だからさ、どんなお店なの?予約の必要なお店なの?それともカフェ?」 おい、首を傾げてんじゃないわよ。 「今度からさ、予約の必要なお店じゃなくて居酒屋とかファミレスとかにしなよ。その方がお店にキャンセルで迷惑かけなくて済むから」と伝えて、ビールのおかわりを頼んだ。 「うん、今度そうする。やっぱりエミちゃんに相談して良かった🎵」とニコニコ。 全くこの男は、本当、やってられないわ。
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