元カレと元旦那

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元カレと元旦那

仕事が終わり駅に向かっていたら、居酒屋もんのママから電話。 「エミちゃん仕事終わった?」と、なんか声のトーンが暗い。 「終わって駅に向かってるんですが、どうしたんですか?」と私。 「あのね、お店に美香子さんがいるんだけれど、」 どうやら一人で飲んで荒れているらしい。 もんに着くと、ママが目で合図。 あー確かに、これは何かあったに違いない。 「そんなに飲んでどうしたの?」と声をかけると 「これが飲まないでいられるかっての!」と、言いながらビールのお代わりをする。 ママが、もうこれが最後よ。と置いていく。 「あのね、息子のところにアイツから電話が来たんだって」 「アイツって元旦那?」 「そ、なんて言ったと思う?母さんに謝りたいって言ったんだってよ。また4人で食事したり旅行したりしたいって。今更、何を謝るのよ!散々好き勝手な事をして、借金つくってさ」とくだをまく。 飯島美香子とは、小学校から大学まで一緒だった。 だから、どんな恋愛をして結婚して離婚したのかも全部見てきた。 「息子は、何言ってんの?母さんがどんな思いをして僕と妹を育てたか知らないでしょ?父さんの作った会社の借金の保証人になってたから、必死に働いて今も返してるんだよ。養育費も、慰謝料も払いたくない。それで良いなら離婚に応じるって言ったのは父さんだよな。今更、謝って母さんが許してくれると思ってるなら頭がイカれてるとしか思えない。」って言ってくれたのよ。と小さく笑った。 そりぁ、そうだよねぇ。 簡単に、許せる人生じゃなかったもんね。 歳をとって気がついたら、チヤホヤしてくれる女もいなくなって寂しくなったって事なんだろう。 「それで頭に来て飲んでいるの?」と聞くと、違うと顔を上げて私を睨む。 「違うの?じゃあ何でこんなに荒れてんのよ」 違う理由を聞きたい私。 「元旦那の事があって本当気分が最悪だったから、気分直しに出かけたのよ。そしたら真斗がいたから声をかけようと思ったら、可愛い女の子と楽しそうに腕を組んで歩いて来たのよ」 うわ〜最悪だわ。 でも、美香子の他に女がいるよって前から伝えてあったよね。 「私に気がついているはずなのに、まるで誰もいません。って感じで歩いて行ったのよ」 エミが言った通りだったわ。と言いながらビールと声をかける。 ママが「もうダメ。水飲んで」と水を置いて行った。 北林真斗は、イケおじと言われるくらいダンディで女にモテる。 とても40代には見えない。 二人が付き合い始めて五年くらいかな。 「今日、真斗に会って、何で私を無視したの?って聞いたら、なんて言ったと思う?美香子は男にモテたくていつもセクシーな格好をしてるよね。男を誘ってるよね。私はセクシーなのよ!どう?って。私は真斗の為におしゃれしているのに。何で私の気持ちをわかってくれないのよ!!悔しいやら悲しいやらで飲まずにいられないわ!」と、泣きながら拳でカウンターを殴った。 あぁ真斗は、美香子に飽きたって事だわね。 さて、どうするか。 困ったな、とりあえず美香子を連れて帰らなきゃ。 「ママ、タクシー呼んで連れて帰るわ」
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