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母屋に行くと、両親と正孝夫婦と悠斗が待っていた。
この家は、相変わらず大きいわね。
玄関のホールだけで、今住んでいる部屋が丸ごと入りそう。
「おかえり。元気にしていた?」と母。
ふふふ、私の事を知らないふりも大変だわね。
父は何も言わず微笑んでいる。
母から聞いていると思うけれど、多くを語らないのは昔から。
正孝とケイトは、私に何と声を掛けていいのか迷っているように見える。
悠斗はニヤニヤしてるだけ。
ほんと、この人はくえないわね。
キミジマのパーティーの話になり、ドレスに関しては母が用意したかったようだ。
何で相談してくれなかったのかといろいろ言われたけれど、成り行きでそうなってしまったんだもの仕方ないよね。
とりあえず、お姉様にもう頼んでしまったし、お直しもできているので丁重に断った。
食事をして行けと言われたが、おさむさんとの約束があると断って家を出ようとした時に、正孝が何か言いかけたけど、この家には私の居場所はない。
今更、あの部屋の事でいろいろ言われても帰る気もないしね。
「じゃあね」と家を出る。
悠斗が送ると車を出してくれたので、ありがたく送ってもらう。
「姉貴、ケイトとは初めてだっただろ?」
「そうね、おとなしい感じの人だね」
「あの部屋が姉貴の部屋だったのを知らなかったらしいよ。初めて来た時に兄貴は、あちこちの部屋を案内していたらしいんだ。ちょうど姉貴の部屋のドアが少し開いていて、それを閉めようとした時に、ケイトが日当たりが良くて気持ちよさそうな部屋ねって言ったんだって。」
「ふ〜んだ、そうなんだ」
「兄貴は、アメリカから初めて日本に来てここで暮らすのなら、ケイトが気に入った部屋で過ごさせてやりたいって思ったらしいよ。」
「それならそれを言ってくれたら良かったんじゃないの?」
「そうだよね。言葉が足りなかったよね。」
「もう帰る気がないから、どう使ってくれようといいんだけど」
「ケイトは、姉貴の部屋だとは知らなかったらしくて、それが原因で家を出たって聞いて兄貴を責めたらしいよ。結婚式にも来なかったから、相当落ち込んでたなぁ」
もう関わりたくないと思って結婚式を欠席したんだよね。
「それで?私にどうしろと?」
悠斗は、さぁねぇとクスッと笑っているだけ。
ほんと、この子は侮れない。
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