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パーティーの翌日、クリニックに行くと、院長をはじめ静香ちゃんと喜子さん、それに看護師さん5人が新聞を覗き込んでいる。
「おはようございます。何を見ているんですか?」と聞いたら
「あ、エミさん、おはよう」と院長。
「エミさん、昨日は婚約されたんですね。それならそうと言ってくださいよぅ」と静香ちゃん。
「そうですよ。みずくさいじゃない」と喜子さん。
その言葉に、皆んなが頷く。
なになに?なんでそんな事になってるの?
訳がわからない私は、看護師さんの持っている新聞を覗き込んだ。
「えーーーーー」嘘でしょ?
な、何で新聞にデカデカ載ってんの?
奪い取るように新聞を見る。
「キミジマの御曹司婚約!!お相手はサカキバラの長女」
「星に願いを結婚」
「小さなお姫様の願いを叶える王子」
うわ〜凄い見出し恥ずかしい。
「これ何処で手に入れたんですか?」と恐る恐る聞いてみた。
「コンビニにも駅にも売ってました」と看護師さん達。
「エミさん、サカキバラのお嬢様だったんですね。びっくりしました」と静香ちゃんと喜子さん。
「そんな事を履歴書には書いてなかったけれど?」
院長先生ごめんなさい!
「ちょっと事情がありまして、サカキバラとは関係なく働きたかったので書きませんでした」と頭を下げる。
あの頃は、とにかく家との関係を無かった事にしたくてたまらなかったからなぁ。
それにしても世間は恐ろしい。
昨日の話が朝にはニュースになってるんだもん。
「これからの事ですが、このクリニックを辞めるって事になりますか?」の問いに、私は思いっきり首を振った。
「いいえ、辞めません。彼も今まで通りでいいと言ってくれましたので」そう答えると、院長はじめ皆んながホッとしたよな顔をした。
ここは私を私として見てくれた唯一の場所だもの辞めないわ。と心から誓う。
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