240人が本棚に入れています
本棚に追加
その時、母は顔を歪めて泣きそうな顔をしていた。
「その理由は俺が中学に入った時にはわかったんだ」そう言って母を見た。
「中学に入ってすぐに俺が怪我をしたんだ、その時にかなりの出血があって輸血をするとなった時に血液型を調べたんだな。何気なくカルテを見ると俺の血液型はABだった。両親はO型それで俺は実子じゃない事を知ったんだ。」と、兄はとても苦しそうな顔をしてため息をついた。
「お兄様が?実子じゃないってどういう事?」私と悠斗は混乱してしまった。
その時に、ちょうど帰って来た父が自分から説明すると話してくれた。
「正孝は、俺の兄の子供なんだ。正孝の両親は軽井沢からの帰り道でカーブを曲がりきれなかった車と正面衝突をして即死だった。後ろに乗っていた正孝は無傷だったんだ。私達には、まだ子供もいなかったし俺たち以外に親族はいない。それで正孝を養子に迎えたんだよ」
あまりの衝撃に座っているのもやっと。
そんな事があったなんて知らなかった。
だって私達似ているもの。
兄弟だって今のいままで思ってたし。
母は「エミに寂しい思いをさせていたなんて思わなかった、貴女はいつもにこにこしていて一言も参観日に来てくれない事を責めたりしなかったから」
そう、私は言えなかったんだよね。
お兄様を一番に考えているのがわかっていたから。
「私が正孝の参観日とか運動会を優先したのは、美和子さん正孝の母親が見たかっただろうと思って、写真を忍ばせて行っていたのよ」それを聞いた、兄は驚いた顔をして母の顔を見た。
そして顔をくしゃくしゃにして泣き出し、母を抱きしめ「ありがとう。そんなに思ってくれて」と呟いた。
私も悠斗も事実をこんな形で知る事になり、改めて家族って血のつながりだけじゃないって思った。
兄は「エミが母親に遠慮もなく喧嘩を振ったりするのを見て羨ましかった。本当の親子だからできるもんな」と泣き笑いしている。
「お兄様だって、本当の家族でしょ?お父様と亡くなった伯父様は兄弟だったのよ?私達と血のつながりはあるじゃない」
「そうだよ、兄貴は兄貴だ。他の誰でもない。」
私と悠斗が正孝に抱きついた。
「ありがとう、ありがとう。」と正孝は泣きながら私達を抱きしめ返してくれた。
私達家族にとって今回の出来事は、青天の霹靂だった。
ふと、あれ?なんの話で来たんだったかな?と思っていると、ケイトがこっそりドレスの事があやふやになって良かったわね。とウインクしてる。
ああそうよ、ドレスの事で揉めていたんだった。
ここは、このまま黙って帰ろう。
そっと家を抜け出そうとしたのに、お父様の「家族全員が揃ったんだから一緒に食事をしよう」と言う。
諦めろと言うような兄と悠斗の顔を見て、大きくため息をついてしまった。
最初のコメントを投稿しよう!