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「そうだな。ホッケと漬物の盛り合わせ、かな」
「肉は良いんスか? ガツンと」
「一人暮らしじゃ焼き魚なんて食わねぇから、こういうのに惹かれるんだよ。お前が食いたいなら頼めば良い」
アパートのキッチンに魚焼きグリルなんて付いてない。付いてたところでこの俺が料理する訳がない。
翔太は受け取ったメニューから「じゃあ鳥の唐揚げを頼みましょう。あとだし巻きと芋煮」と選んで、店員を呼んで注文した。
「なんか神林さんの方が歳を誤魔化してるみたいっスね」
「誤魔化してねぇよ。ここ、良く来る店なのか?」
アハハと笑う翔太をいなして反対に訊く。飾り気の無いメニューといい女子が好きそうな小洒落た店でもなく、学生の多いチェーン店でもない。翔太みたいな若い奴が好みそうな感じはしない。
「ええ。俺のアパート、こっから近いんスよ」
だから良く来るんスと続ける。
「落ち着くでしょ?」
「まあな」
厨房に立つ主人も注文を取りに来た女も割と年配に見え、客層も落ち着いた年代が多そうだ。
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